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| 『ハナさん−おばあさんの童話』 |
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| 森山京(作)/山本容子(絵)/ポプラ社 |
ハナさんっておばあさんの名前みたいって思うでしょう。そうです。この本はおばあさんの童話です。
「昔、昔あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。」昔話はこれで始まり、おじいさんとおばあさんの登場となります。この「ハナさん」は、おばあさんの話だけど、昔話じゃないのです。幼い時も恋をした時も子育ての時もその時を一生懸命に生きて、そして今もまた輝いているハナさんのお話です。
『またね』
薔薇の花束を抱えて電車に乗りこんだハナさんとハナさんに席を譲ってくれた若者と取り交わした会話からイギリス、チェス、ホームスティの話題へと移ります。僅か数十分間にハナさんと友達がイギリス行きを断念したことまで若者と話しこんでしまいました。電車の中の暖かい空気が流れます。ハナさんは若者が電車を降りる時に、自分が言った『またね』に苦笑します。だって再び逢う事なんてないのですもの。だけど久しぶりに若やいだ気持ちになっていたから満足のハナさんでした。他人を排除してしまう空気が濃いとどうしても息苦しくなってしまいます。ちょっとだけの触れあいでも捨てたものじゃありません。なにげなく温かい言葉がスッとわいてくるような気持ちでいたいですね。
『海苔飯弁当』
ハナさんの同級生5人がレストランでビーフシチューを食べた後のお茶会での会話です。死に際に何を食べたいかってことで、それぞれに食べたい物をあげています。ハナさんはハスの天麩羅。海苔飯弁当なんていうお友達もいました。昔はそういうのを良く食べていたねと盛り上がります。ハナさんは明日のお昼ご飯をそれに決めました。夫の反応をあれやこれやと考えて楽しくなってきました。
『浦島太郎』
孫娘に絵本を読んであげながら、60年前の小学一年生の頃を思い出していました。本を読むのがとても上手なイワキさんがいました。みんなの前で臆することもなく感情を込めて読むので聞くのが楽しみなハナさんでした。ある日、イワキさんのお母様が病気になったとかでイワキさんが転校してしまいました。それ以来消息も途絶えイワキさんのこともわかりませんが、浦島太郎の絵本を読みながらイワキさんを思い出すのでした。
遠い昔の事をふっと思い出すことがあります。意識せずにいる時ほど思い出は鮮明です。歳を重ねていくと沢山の思い出が増え、幸せに包まれているように感じます。他に『雨催い』『もみじ』『銀木製』『夕日』が収められてあります。歳を重ねていくことは当たり前のことだけど、この先老いて何の楽しみがあるのだろうと思います。月日を経ていく事が自分を失うようで怖いと思ったりもします。それでも今日を生き、明日も生きていくことで、いつのまにか「その時」を通過している自分がいます。気がつかないうちに歳を重ねていくのですよね。若いときに自分が40〜50になることを考えてもみなかったように、今も老いた自分を想像できません。
【紹介者あとがき】
今日のこの日が、積み重なって思い出として、いつか花開きますようにと老いた自分へのタイムカプセルの宝物のようになればと精一杯に過ごすことにいたしましょう。
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